川畠成道の四季

ミューザ川崎シンフォニーホール

 「川畠成道の四季」ツアーが、10月21日(土曜)午後5時からミューザ川崎シンフォニーホー ルを皮切りに始まりました。これから1週間をかけて、名古屋、大阪、東京、長野と計5ヶ所を回るとのことです。写真は、皮切り公演を聴くために21日午後4時45分頃JR川崎駅に到着し、ミューザ川崎シンフォニーホールに近付きながら撮った同ホールの外観です。 JR 川崎駅の西側は、確か東芝発祥の地で、長らく同社の工場等の敷地になっていましたが、売却され現在大規模な再開発中です。このホールもその一部かどうか知りませんが、この再開発に連動して南端に早めに生まれた素晴らしいホールで、建物内に大きなエイトリアム(吹抜け)もあります。

 さて、今回の成道さんは、いつものピアノの伴奏だけの独奏とはがらりと趣向を変え、イタリアでも有数の弦楽合奏団といわれるヴェニスヴィルトゥオーゾ・アンサンブルを従えて登場しました。この合奏団は12人構成で、第一ヴァイオリンが3人、第二ヴァイオリンが3人、ビオラが2人、チェロが2人、コントラバスが1人、そしてチェンバロが1人という内訳でした。

 プログラムは次のとおりです。

 いつものとおり、胸にじいんと来て、本当に自然に目に涙が出てくるような成道さんのヴァイオリンの音色です。彼は、楽譜を見ることができないので、当然すべてを暗譜している訳です。そのためか、彼のヴァイオリンの音色は彼の心が出しているような気がして、それがさらに我々の心を打つのでしょう。そしてホールに詰めかけた1,000人はいるかと思われる聴衆が、区切り区切りで拍手喝采を送り、最後には拍手が鳴り止まず2つのアンコール曲を演奏させてしまいました。

 ミューザ川崎シンフォニーホールの内部は舞台が焦点の一つに位置するような楕円形をしており、舞台の後方には巨大なパイプオルガンが聳え立っていました。この楕円形のホール内部にいると、母親の胎内にいるような気持の安らぎを覚えました。フジテレビの球体展望室の中での落着き感に通じるものがあると思います。そう言えば、成道さんはヴァイオリンの調律(チューニング)を自分の耳だけで行なっていましたので、きっと絶対音階の持主でもあるのでしょう。幸せな気持ちになっての帰り道、すっかり暗くなった中で振り返ると、ミューザ川崎シンフォニーホールがぽっかりと暗い空に浮かんでいました。

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